詩の教室につどう人たち・・



               風の気持ち

                福本 八重



         蓑虫が閉じこもっている
         蜘蛛が破れた巣の隅で足を縮めている
         風がささやいても知らん顔
         風は方向を間違えないように
         気を配りながらゆるやかに動く

         空が思いがけなく澄んできた
         風が窓をたたく
         期待することもないのに
         不思議と私の心を揺さぶる
         落ちつかない
         なんども風の気持ちを考えてみる
         風船のようにふんわりして掴みどころがない
         てのひらに乗ったと思ったら
         いつの間にか遠くへ  
         高い空から手招きしている

         季節が風を踊らせたら
         風からメールが届くかもしれない


                 ◇ ◆ ◇


この作品、80歳を過ぎた女性が書いたと言われたら、誰でも驚かれるに違いありません。先入観なしで読めば、20代の若者の詩と思われるでしょう。
福本さんは、私が詩の教室を郷里で開いて以来の、長いおつきあいです。隣県から高速バスに1時間半も乗って、通って下さっています。
年齢を超えた、感性のしなやかさ、伸びやかさに敬意を表したい気持ちです。