何げないものを大切に・・




松岡 美峰子


    文房具店で
    無地の封筒を選んでいる
    五枚ずつ束になり
    細い帯にはそれぞれ名前がついている

    うす紫「まわり道」 空色「遠まわり」
    振り向けば後に見える長い道
    白は「近道」 かすんで見えない道

    私のまわり道も たぐりよせ
    一束にまとめてしまおう
    手にしているのは黄色の「とおり道」

    指先に光る二枚の百円玉
    レジのあく音がして新しい道が始まる



          ◇ ◆ ◇



私は今日まで無数の封筒を買いましたが、封筒にこんな思い方をしたことはありませんでした。
目立たぬもの、無名のものに美しい意味を発見することが詩のすばらしさ。
だからでしょう、詩作は最も深い愛情に根ざした行為と呼ぶ詩人がいるほどです。