DIARY
6月30日(土) ♪心もようは中也日和♪
中也のお話をするということで、詩人の古里・山口市湯田温泉町を訪ねました。まず、足を向けたのは吉敷(よしき)川の畔りにある中原家墓所。ここは中也を始め、父母など中原家一族が葬られています。
墓碑銘の文字は、中也が14歳の時の自筆です。
             竹やぶの向こうが作品「ひとつのメルヘン」の舞台となった吉敷川


墓所は、湯田温泉町から車で15分ほどの地にあります。まわりに人家はわずかで、田圃の中に自然のまま、野に置かれたようなたたずまいでした。
小さな敷地の中で、ひときわ目立つのが立派な中原家の墓です。
酒好きだった故人に手向けた供養の品々が並んでいました。
私は、中也の霊に「拙い者ですが、あなたのお話をさせていただきます」と頭を下げて来ました。
そして、この地に導かれた不思議な因縁を思い、詩的な縁があったのだなと感傷にふけったことでした。




「奇蹟の子」と呼ばれ、神童ともてはやされた中也が、厳格な父母に反抗して中学を落第します。中也は父の命で地元を離れ、他郷の中学に転校します。それは、罪人同然に故郷を追われたのでした。見送りは祖母一人。人目を避け、暗くなってからの旅立ちだったといいます。
私は湯田温泉駅のホームに立って、上り方面を眺めながら、中也がどんな気持ちで汽車を待っていたのか、思いを巡らせてみました。
ここが、まぎれもなく詩人・中原中也の出発の原点であったのですから。


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