何げないものを大切に・・



            小さな花の目
         
高野 和子



     
病床に贈られた盛り花
     友の思いがほの暗い病室の壁を明るくする
     笑いをふりまくミニヒマワリ
     明るく語りかけるカーネーション
     トルコ桔梗は優しく見守る

     鮮やかな花の宴の中に折り込まれている名もない花
     草と見まちがうほど影がうすい
     手にとると 細い茎の先に乗った米粒のような花が
     もの言いたげに一斉に首をふる

      わたしはこんなにか弱い体で生きている
      周りを引き立たせるために生きている

     入院するまで気に止めることのなかった
     小さな命のささやき
     沈んでいく心が
     ひかえめな花の目から差しこむ明かりに
     照らされている


              ◇ ◆ ◇


名もないものを見つめ、思いを深め、自分の心を重ねることで、詩
の言葉は生まれて来るようです。
作者は、思いがけない入院体験から貴重な言葉を生み出しました。
わたしはこんなにか弱い体で生きている/周りを引き立たせるため
に生きている・・名もない花が作者を励まし、語りかけます。試練
を経た人の謙虚な人柄が浮ぶようです。