詩のある花々・・初夏
矢車菊


  少年のような年若い王
  ツタンカーメンの棺

  添えられていたブーケ

  王妃が贈った矢車菊だった
  発掘の記録には
  なお花の色をとどめていたと

  三千年という時間が
  昨日のことのように香る
  少年への少女の思い
プチうんちく:矢車草とも。ツタンカーメン王の墓からも発見された、由緒ある花。古代エジプトでは青い花が魔除けとされ。王のミイラの胸に飾られた。花言葉は、独身生活。
姫著莪(ひめしゃが)

  花の絵にむかえば
  花を見つめた
  画家の心がわかる

  消えていくはかない命を
  一心に見つめることが
  愛情なのだと教えてくれる

  画家でもない私が
  末期の父を
  見つめるほかなかった
  遠い初夏の日
プチうんちく:檜扇(ひおうぎ)の漢名「射干(しゃかん)」を音読みしたもの。胡蝶花とも呼ばれる。絶滅種の一種。花言葉は、あまたの友。
グロリオサ


   波打つ炎のような
   縁取りを持つ花

   炎に魅入られて
   炎の下僕
(しもべ)
   なろうとしたのか

   張り裂けた心の
   飛び散った破片まで
   なお燃えさかるとは
プチうんちく:Gloriosa は、ラテン語の gloriosus(見事な)が語源。別名、百合車(ゆりぐるま)。花言葉は、天分。