詩のある花々・・初秋
竜胆(りんどう)

   カーテンをしめ
   うす暗がりの部屋に
   座っていました

   何も思わず
   悲しみのなすがままに
   時を過ごしました

   花がいつものように
   そばにいました

   私の凍った胸をあけるのは
   紫色をした
   さびしい花の鍵だけでした

プチうんちく:秋の代表花。漢名の「龍胆」の音読み「りゅうたん」が「りんどう」になったという。根の汁が龍の胆のように苦いからという由来も。花言葉は、あなたの悲しみに寄り添う。
擬宝珠(ぎぼうし)

  花は咲いている
  ただそこに

  あるがままの姿で
  愛
(め)でられながら

  人は ただそこにいるだけでは
  許されないのでしょうか

  営みをつづけなければ
  愛されないのでしょうか

  花のようにたたずみ
  黙ったまま そこにいては

プチうんちく:仏教の宝玉である宝珠(ほうじゅ)を模した、橋の欄干の飾り「擬宝珠」に、つぼみが似ていることから。武道館のてっぺんのタマネギの飾りも「擬宝珠」。花言葉は、静かな人。
秋桜

  かぼそい花枝が
  そばを通り過ぎる人の
  小さな風にゆれている

  私はあなたの心の風を感じて
  思いをゆらせただろうか

  かすかな眼のかげりにも
  心を届かせただろうか

  日々ふれあう人たちの
  胸のうちが思われる
  秋桜の花野にいて

プチうんちく:コスモス(cosmos)の語源は、ギリシャ語の 「調和のとれた美」という意味の言葉に由来。やせた土地の方が生育に適する。花言葉は、乙女の真心。