詩のある花々・・初秋
鶏頭

  鶏頭の花は 母が編んだ
  幼い日の手袋を思い出させると
  友がつぶやきました
  
  老いた母は
  子供にもどってしまい
  ケアハウスで暮らしています

  友が会いに行くと
  涙を流して迎えるそうです

  子への母の思いは
  鶏頭のような深い色です

プチうんちく:別名 「鶏冠花」(けいかんか)。名の通り、花穂をニワトリの鶏冠(とさか)に見立てる。花言葉は、色あせぬ恋。
芙蓉



  
秋の澄んだ風が
  花をゆらめかせた時
  私はあなたのことを想いました
  
  
  会うすべもないあなたが
  会釈をしてくれたように感じて
  
  花を揺らした風は
  ひと時 心を遠くへ誘い

  ひとり残された身を
  秋の冷たさが吹き抜けていきました  

 
プチうんちく:朝咲いて夕方にはしぼむ〈一日花〉。芙蓉の貌(かんばせ)は美人の決まり文句。朝の咲き始めは白く、昼はうす紅に夕べは紅く染まる、酔芙蓉(すいふよう)もある。花言葉は、繊細な美。
曼珠沙華

  
秋の風の中で
  冷たい火花がはじけています
  
  亡くなった子供の魂が
  遊べなかった
  花火を揺らしているように

  遠い国と
  うつし世を結ぶ
  はかない花の迎え火です
 
プチうんちく:曼珠沙華とは仏教用語で「天上の花」の意。慶事が起こる前兆に天から紅い花が降るという言い伝えがある。彼岸花、狐花など無数の方言の名前が。花言葉は、悲しい思い出。