詩のある花々・・夏
姫百合


  働かなくても 紡がなくても
  百合は天の恵みで輝いている
  だから明日のことを思い悩むな

  聖書の語る言葉そのままに
  手が動かなくても
  歩けなくても
  ほほえんでいる人よ


  あなたがそこにいるだけで
  私の心は安らぐ
  野の百合のように
  命の鮮やかさを教えてくれるから
プチうんちく:大きな花が風に揺れる様子から名づけられた。〈姫〉は小さく、可憐なものを表す。大伴家持の叔母・大伴坂上郎女(おおともの・さかのうえの・いらつめ)が万葉集に詠んでいる。花言葉は、純潔、無邪気。
印度浜木綿



  
包丁でうっかり指を切った時
  私は小さな悲鳴をあげた

  痛みをこらえられずに
  一日 不機嫌な顔をしていた

  摘み採った時 花は血を流さず
  うめきもしなかった

  深い傷口を花瓶の中に秘めて
  なおも咲き続ける
  花の静けさ
  花の強さ
 
プチうんちく:インド原産。百合に似ているが、こちらは彼岸花科に属する。花の茎が長いのは、そのせい? 花言葉は、どこか遠くへ。
姫檜扇水仙(ひめひおうぎずいせん)


  照りつける日射しのもとで
  花は乾いている

  でも 花を支える土の方が
  もっと乾いている

  花は 土の痛みを
  根の先に受け止めている

  隠れた渇きをいたわりながら
  花は雨を待っている
プチうんちく:葉の形が檜扇に似るので、命名。海外ではモントブレチアと名乗る。フランス人のモントブレットにちなむ。花言葉は、気品ある精神。