言葉の花を摘む・・
                           
                        高田 敏子

                心に ひとり
                思うひとを 住まわせて
                花を摘む


これは作者が好んで色紙に揮毫した詩です。
わずか3行の短詩ですが、読む者に様々な想念をかきたてます。 
普通に見れば、恋愛詩と解釈してよいのでしょう。胸の内に深く人を想うことで、一人の身ではあっても、いつもその人に捧げるつもりで花を摘めば人生は淋しくはない。一人で花を摘むような孤独な日々も、充実した気持で生きていけるのだ、というメッセージを読み取ることもできるでしょう。

また、「花を摘む」という行為を、人生の花を摘むということを暗示していると読み替えることもできます。
人生の花を摘む、とは人によって種々様々ですが、例えば詩を愛好する人にとってはすぐれた詩を書くことかも知れません。その際の、「思うひと」とは、自分にとって最良の読者ということになるでしょう。

さらに、もっと広がりのある読み方もできます。
「花を摘む」を芸術の花を摘み取ると考えると、私にとっての「思うひと」とは師である高田敏子になります。そして言葉の花である詩を摘んでいる、まさに今の私のありようをうたっているようです。
これは、もう私の深読みかもしれませんが、すぐれた短詩とはそこまで読者に感じさせてくれるものなのです。
よい詩とは、読み終ったらそこで話が完結してしまう物語のようなものとは違います。
読み終った後で、そこに書かれている以上の、幾通りもの意味を暗示するものでしょう。