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庭の片隅に今年も曼珠沙華 彼岸花が群れ咲いています。この花の咲き方はユニークです。普通、植物は最初に双葉が芽生えて、茎が伸び、枝分かれして葉を蓄え、最後に茎のてっぺんから蕾がふくらみ、花開くという順序をたどります。
曼珠沙華は違います。茎がいきなり地中からまっすぐに伸び、茎の先端が割れるように一気に開花します。
ですから、この花が咲く時はいつも突然目の前に現れるという印象があります。
まるで打ち上げ花火のように、土の中から秋の精が立ち昇り、大輪の花を広げています。芽を出し、葉を繁らせ、蕾をつけるという手続きがまどろっこしいのでしょうか、あふれる思いのままに命を噴出させているのです。
咲きたいという願いが強すぎて、芽や葉や蕾を置き忘れてしまった、とでもいうように。
曼珠沙華は、別名、仏さまの花。だからというわけではありませんが、長い雄しべは朱色の線香を思わせ、先っぽに火がともっているかと見えます。
願いが、夢が、心の底から沸き上がってくる青春の日は遠ざかりました。
年齢を重ねて日々沈潜していく自分を叱るために曼珠沙華は咲いているのかも知れません。
"大地の出血"とでもいいたいほど、この世に噴き出て、命の色を漲(みなぎ)らせて。
曼珠沙華は、鮮やかな赤い色が血や地獄をイメージさせ忌み嫌われることが多いようです。〈死人花(シビトバナ)〉、〈地獄花〉とも呼ばれます。
悪しき先入観を棄てて傍に佇めば、人の夢を蘇(よみがえ)らせる花であるとわかるでしょう。
2007.10.21
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