めぐり逢うことば・・



   No. 11 2007年6月30日

   高速道路の下に埋もれている
   
里山の生家

   今でも夢に現われる
   縁側の日向の匂い
   井戸の底の深い静けさ

   祖母の待つ家へ向かう
   少年の日の私がいる

   もう心の中にしかない
   峠の道をたどりながら


     
   No. 12 2007年9月16日

   不動産屋が建てる
   無用な
高層マンションが
   日々 空を消していく

   わずかに残ったすき間には
   カッターで切り裂いたほどの
   青空がのぞいている

   空を眺めることさえ
   まるでのぞき見をするように
   人の目を卑しくさせる
   心さむい街



   No. 13 2007年11月18日

   
静かな秋です
   老いた母の身体を拭く
   静かな朝のひと時です

   

   庭隅に曼珠沙華が
   命を灯すように
   咲いています

   身ぎれいになった母が
   新聞を読んでいます

   秋の陽射しに浮ぶ
   母の肩も静かです